アイタヨ箱根の宿まとめ →
アイタヨまとめ › 八ヶ岳の湧水
八ヶ岳 ・ 湧水

八ヶ岳の湧水

北杜市公式の名水百選のページには、八ヶ岳南麓高原湧水群の欄に、次の一文が添えられています。

※本湧水は農業用水ですので生水での飲用には適しません。 名水百選に選ばれていることと、その場で汲んで飲めることは、別の話です。 八ヶ岳の湧水は、見に行く価値のある場所です。ただし「ペットボトルを持っていけば天然水が手に入る場所」として行くと、公式の案内とずれます。この記事は、どこに何があり、いつ開いていて、公式にどう書かれているかだけを並べます。

初めての八ヶ岳八ヶ岳の現地の移動八ヶ岳1泊2日モデルプラン静かに過ごす八ヶ岳冬の八ヶ岳

八ヶ岳南麓高原湧水群とは

北杜市は自らを「日本一の名水の里」と呼び、次のように書いています。

北杜市内には日本名水百選が3カ所認定されています。

その3カ所のうち、八ヶ岳にあるのは1つだけです。「八ヶ岳南麓高原湧水群」がそれにあたります。

代表的なものに三分一湧水、大滝湧水、女取(めとり)湧水の3カ所が名水百選に選定されています。その他に八ヶ岳南麓には湧水が50カ所以上あると言われています。標高約1,000m付近に点在するこれらの湧水群は、利水が不安定なこの地域において重要な役割を果たしています。

公式の一覧表では、次のように整理されています。

項目記載
名称八ヶ岳南麓高原湧水群(やつがたけなんろくこうげんゆうすいぐん)
形態湧水
所在地北杜市長坂町、小淵沢町
選定年月日昭和60年3月

「標高約1,000m付近」に帯のように並んでいる——これが八ヶ岳の湧水のいちばんの特徴です。市の水質調査のページには、その理由に近いことが書かれています。

八ヶ岳南麓に多数存在している湧水群は、特徴として標高1000m付近のベルト状に広がる大変興味深い湧出形態を示し、豊富な湧水量を誇っている場所、昔は多量に有していた場所、現在も飲料水として利用されている場所である。このかけがえのない湧水群は環境により、水質、湧水量が大きく変化する可能性がある。現在、湧水群の周りは観光及び別荘地開発が進んでいる。

なお、北杜市の「水の山」プロジェクトのページでは、数え方が違います。

また、北杜市は花崗岩を始め多様な地質と地層からなり、70を超す湧水や滝が分布し、太古の縄文時代から人間が巧みに利用してきた八ヶ岳エリア、日照時間日本一の広大で肥沃な農耕地帯である茅ヶ岳・瑞牆山エリアも広がります。

「50カ所以上」と「70を超す湧水や滝」。どちらも北杜市公式の表記なので、この記事ではどちらかを正解として扱いません。

三分一湧水(長坂町)

八ヶ岳の湧水でいちばん行きやすいのが三分一湧水です。北杜市公式の説明を引きます。

三分一湧水は、雑木林の中にあり、水温11℃の水が1日約8500トン湧き出ています。戦国時代に武田信玄が整備し下流の三つの村に農業用水を三等分するために三角石を置いたと伝えられ、今でも堰の真ん中に鎮座しています。

「農業用水を三等分するため」——ここが冒頭の但し書きにつながります。三分一湧水は観光地である前に、下流の田畑へ水を配るための施設です。

名前の由来は、同じ北杜市公式でも別のページに別の説明があります。

三分一(さんぶいち)湧水は、6つの村、3地域に分けたことからこの名になったといわれて言います。八ヶ岳南麓の山崩れにより、湧水地は押し流され、その都度修復がされてきました。今の形は、昭和19年に完成したと言われています。

いま見えている堰は「昭和19年に完成した」形だと書かれています。知っておくと現地の見え方が変わります。

場所と行き方

項目記載
住所山梨県北杜市長坂町小荒間292−1
中央自動車道・長坂ICから車で約10分
電車JR小海線・甲斐小泉駅から徒歩約10分
駐車場普通車:80台/バス:2台

駐車場が普通車80台というのは、八ヶ岳の見どころとしてはかなり大きいほうです。混雑期でも比較的入れます(混みやすい場所の話は静かに過ごす八ヶ岳にまとめています)。

三分一湧水館

湧水のすぐそばに、市の施設があります。

近くにある三分一湧水館では、八ヶ岳南麓の湧水の仕組みや水質、歴史についての展示を紹介しています。併設の「農産加工物直売所」には地元で採れたて野菜や加工品が所狭しと並び、「そば処三分一」では地粉で作る手打ちそばを美味しくいただくことができます。

営業条件は、北杜市「水の山」プロジェクトの掲載でこうなっています。

冬は火曜が休みという点だけ、行く前に頭に入れておいてください。冬の八ヶ岳全般でも、休業の増える時期です。

大滝湧水(小淵沢町)

もう一つの代表が大滝湧水です。

大滝湧水は、水温約12℃で日量約22,000トンが湧き出ると言われます。小淵沢町の大滝神社の地内にあり、木をくりぬいた樋口から湧水が流れ落ちます。古くから伝記としても残っている湧水です。江戸時代には甲府代官が民有地を買い上げて保全を図ったとされ、今日では地区の住民によって管理されています。まわりは公園として整備されていて、景観がよく、春は新緑、秋はモミジの紅葉が楽しめます。

読み落としてはいけないのは「大滝神社の地内にあり」「今日では地区の住民によって管理されています」の2点です。神社の境内であり、市の観光施設ではなく地区の住民が管理している場所——つまりここは誰かの日常の場所です。静かに見て、静かに帰る場所だと考えたほうがいいと思います。

なお、三分一湧水と大滝湧水の開園時間・料金・取水の可否について、北杜市公式のこれらのページに個別の記載はありません。この記事でも書きません。現地の掲示に従ってください。

女取(めとり)湧水についても、名水百選の3カ所として名前と写真が挙げられているだけで、場所・アクセス・見学条件を示す記載は、今回確認した北杜市公式のページにはありませんでした。

「汲んでいいのか」を公式から読む

ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。

① 名水百選=飲める、ではない

冒頭に引いた「※本湧水は農業用水ですので生水での飲用には適しません。」という但し書きを、選定された側の自治体自身が名水百選の紹介ページに置いている——これが出発点です。

② 一方で「現在も飲料水として利用されている場所」もある

同じ北杜市の水質調査ページには、先に引いたとおり「現在も飲料水として利用されている場所である」という記述もあります。矛盾ではありません。八ヶ岳南麓の湧水は50カ所以上あり、場所ごとに用途も管理者も違うということです。名水百選として紹介されている湧水(=農業用水)と、生活用水として使われている湧水が、同じ標高帯に混ざっています。

だから、「八ヶ岳の湧水は飲める/飲めない」を一般化しないでください。その場所の掲示が唯一の答えです。

③ 北杜市は、地下水そのものを条例で管理している

北杜市では、地下水の自然涵養と保全に努めるとともに、その適正な利用を図ることで公共用の水道資源及び湧水資源を保全するため、北杜市地下水採取の適正化に関する条例を制定し、市内全域において地下水の採取に必要な規制を行っています。井戸の掘削・地下水の採取にあたっては、北杜市長の許可が必要です。

規制地域の指定は、湧水を守るためにかなり具体的に切られています。

区分指定地域
公共用水道水源の周辺地域公共用水道の水源から半径250メートル以内の地域
湧水資源の重要な地域【その他の湧水地域】湧水から500メートル以内の地域
地形上地下水資源の極めて重要な地域長坂町の区域でJR小海線から上の地域

「湧水から500メートル以内」「長坂町の小海線から上」が、まるごと規制地域です。三分一湧水は長坂町の小海線沿いにあります。それだけ、この水は行政が守りにいっている資源だということです。

そのうえで市は、水質についてこう明言しています。

北杜市地下水採取の適正化に関する条例は、採取する地下水の水質を保証するものではありません。地下水を飲用水として使用する場合は、設置者又は使用者の責において定期的に水質検査を受け、飲用水として不適当な場合は、飲用水として適するよう努めてください。

八ヶ岳の水は、2つの海へ分かれる

八ヶ岳の水を理解するうえで、南牧村公式の次の記述は外せません。

清里駅を過ぎ、上り坂の最後にある踏み切りがJR鉄道最高地点で、分水嶺になっています。最高地点より小淵沢側に降った雨は富士川に流れ込み、静岡県富士市で太平洋に注ぎ込みます。最高地点より小諸側に降った雨は千曲川に流れ込み、やがて信濃川となり新潟で日本海に注いでいます。

清里と野辺山のあいだの踏切が、太平洋と日本海の分かれ目です。同じ村の公式ページは「野辺山駅と、となりの清里駅の間にJR鉄道最高地点(標高1375m)があります。」とも書いています。

名水百選に選ばれている湧水群の所在地は「北杜市長坂町、小淵沢町」。つまりすべて分水嶺の南側(太平洋へ流れる側)です。八ヶ岳の湧水を見に行くというのは、太平洋側に降りてきた水を見に行くということになります(小海線の乗り方は八ヶ岳の現地の移動にまとめました)。

「八ヶ岳の名水」と間違えやすいもの

北杜市には名水百選が3カ所ありますが、八ヶ岳ではないものが2つ含まれています。ここは混同されやすいので、公式の記述で分けておきます。

白州・尾白川(所在地「北杜市白州町」)について、北杜市公式は「南アルプスの懐深く、雄大な甲斐駒ヶ岳が源流である尾白川の渓谷には、」と書き出しています。源流は甲斐駒ヶ岳=南アルプスであって、八ヶ岳ではありません。金峰山・瑞牆山源流(平成の名水百選)も、所在地は「北杜市須玉町増富」、選定年月日は「平成20年6月25日」で、こちらも八ヶ岳ではありません。

北杜市の「世界に誇る『水の山』宣言」(2015年5月19日/北杜市長 白倉 政司)は、この3つを並べて書いています。

ユネスコエコパークに登録された南アルプスの甲斐駒ヶ岳や日本百名山八ヶ岳、金峰山・瑞牆山、その他の美しい山々は、日本の名水尾白川、八ヶ岳南麓高原湧水群、金峰山・瑞牆山源流、そして名瀑精進ヶ滝その他の清らかな水環境を生み出しています。

山が3つ、名水が3つ。八ヶ岳に対応するのは「八ヶ岳南麓高原湧水群」だけです。「北杜市の名水」を全部まとめて八ヶ岳の話にしないでください。

長野側(原村・富士見町・南牧村)はどうか

八ヶ岳は県境をまたぎます。では長野側の湧水はどうか。

今回、原村・富士見町・南牧村の公式サイトで、湧水を主題にした案内ページを見つけられませんでした。原村公式の「上水道」のページは料金・届出・水質検査計画などのお知らせ一覧で、水源を説明する記載がありません。南牧村公式で水について確認できたのは、上に引いた分水嶺と千曲川の説明です。

長野県には県独自の選定があります。

長野県では、水環境保全意識の高揚を図るとともに、地域の活性化に役立てるため、良好な水質、美しい景観、歴史的価値等を持ち、地域の誇りとして住民に守られてきた湧水等の中から、特に優れたものを「信州の名水・秘水」として選定しました(平成22年1月28日)。県内の市町村から36箇所の推薦があり、3回の選定委員会で検討した結果、15箇所を選定しました。

ただし、この15箇所の一覧は同ページ内に本文として示されておらず、今回は取得できませんでした。そのため、八ヶ岳西麓(原村・富士見町)が含まれるかどうかは確認できていません。「含まれる」とも「含まれない」とも書きません。

現時点で言えるのは、八ヶ岳の湧水として公式に確認できるものは山梨県側(北杜市)に集中しているということだけです。

行くときの実務

1. 水を汲む前提で行かない。取水についての案内は、現地の掲示が最優先です。

2. 三分一湧水は駐車場が広い(普通車80台)。車で行きやすい数少ない見どころです。三分一湧水館は9:00〜17:00、冬(12月〜3月)は火曜が休館(八ヶ岳1泊2日モデルプラン)。

3. 水温は年間を通じて低い。三分一湧水は11℃、大滝湧水は約12℃と公式に記載されています。夏でも水辺は冷えます。上着を1枚。

4. 犬連れなら、行き先ごとのルールは施設側が決めます。八ヶ岳全体の犬同伴ルールは八ヶ岳で犬と行けるスポットにまとめています。

なお、アイタヨの八ヶ岳のエリアページはまだ準備中です。犬と泊まれる宿のエリア別ページはこちらにまとめています。

よくある質問

八ヶ岳の湧水は飲めますか?

名水百選「八ヶ岳南麓高原湧水群」については、北杜市公式が「※本湧水は農業用水ですので生水での飲用には適しません。」と明記しています。一方で同じ市の資料には、八ヶ岳南麓の湧水群のなかに「現在も飲料水として利用されている場所」があるという記述もあります。場所ごとに違うので、現地の掲示に従ってください。

三分一湧水はどう行きますか?営業時間は?

北杜市公式によると、車なら中央自動車道・長坂ICから約10分、電車ならJR小海線・甲斐小泉駅から徒歩約10分、駐車場は普通車80台・バス2台です。併設の三分一湧水館は営業時間9:00〜17:00、定休日は年中無休(12月〜3月は火曜日休館)と掲載されています。

長野側にも湧水はありますか?

今回、原村・富士見町・南牧村の公式サイトで、湧水を主題にした案内ページを見つけられませんでした。長野県は「信州の名水・秘水」を15箇所選定していますが、一覧の本文を取得できず、八ヶ岳西麓が含まれるかは確認できていません。

白州の水も八ヶ岳ですか?

違います。北杜市公式は白州・尾白川について「南アルプスの懐深く、雄大な甲斐駒ヶ岳が源流である」と書いています。

参考・出典

※各施設・スポットのルールは変わることがあります。おでかけ前に公式情報で最新をご確認ください。

最終更新: 2026-08-20